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長崎家庭裁判所 昭和35年(家)165号 審判 1960年3月10日

申立人 ○○丈夫

法定代理人親権者 ○○政男 外一名

主文

本件の申立を却下する。

理由

一、本申立の要旨

申立人は、生後一年位の時児童相談所から申立人の養父母の許に引取られ、養子縁組をしたが、当時は全く病弱の子であつたところ、養父の母から、これは俗にいわゆる名前敗けと云うものかもしれないから改名してはと勧められ、「勝」と改名したところ、その後漸次健康となり、自他ともに右「勝」と呼んで現在幼稚園に通つている。

そこで、申立人の名「丈夫」を前記「勝」と変更することの許可を求める。

二、当裁判所の判断

調査の結果によると、申立人は生後一〇か月位の頃から児童相談所より現在の養父母の許に里子として預けられていたところ、昭和三一年一月一三日右養父母と養子縁組をしたこと、申立人は生来虚弱で病気が絶えなかつたので、昭和二九年一二月頃から養父の母や近隣者から改名することをすすめられ、当初「雅」(まさる)と改めたが、これは読みにくいため、更に「勝」(まさる)と改め現在にいたつたこと、申立人は学令期になり、自らも自分の名を「勝」と思い込んでいることが認められる。

右認定の事実によると、本件名の変更の理由は、要するに申立人が病弱であつたため、名を変えると健康になるという迷信に基き改名して通称を用いているということにすぎず、他に何等改名の必要性は発見できない。すでに学令期に達した申立人が、自分の名と思い込んでいるものと異つた本名を知つて一時心に動搖をきたすことのあることは予想できるけれども、このことによつては、未だ右のような動機に発した改名を正当づけることはできない。

結局、本件名の変更申立てについては、正当な事由がないといわねばならないから、右申立を却下することとし主文のとおり審判する。

(家事審判官 斎藤平伍)

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